PNYのPCIe 3.0 NVMe SSD、「XLR8 CS3030」の1TBモデルをレビューします。
公称値の読み込み速度は3,500MB/s、書き込み速度は3,500MB/sと、PCIe 3.0最速クラスのNVMe SSDの性能を掘り下げてみたいと思います。
目次
PNY XLR8 CS3030とは
「PNY XLR8 CS3030」は、PNY Technologyより販売されているExpress 3.0(x4)接続のエントリークラスのNVMe M.2 SSDです。Express 4.0(x4)接続のよりハイエンドのXLR8 CS3040が別途存在します。
「XLR8 CS3030」シリーズ | |||||
型番 | M280CS3030-250-RB | M280CS3030-500-RB | M280CS3030-1TB-RB | M280CS3030-2TB-RB | M280CS3030-4TB-RB |
インターフェース | PCI Express 3.0(x4) | ||||
容量 | 250GB | 500GB | 1TB | 2TB | 4TB |
連続読み取り | 3,500MB/s | 3,500MB/s | 3,500MB/s | 3,500MB/s | 3,500MB/s |
連続書き込み | 1,050MB/s | 2,000MB/s | 3,000MB/s | 3,000MB/s | 3,100MB/s |
動作温度 | 0°C~70°C | ||||
MTBF | 2,000,000時間 | ||||
耐久性 (書き込みバイト総数) | 170TB | 170TB | 360TB | 660TB | 6070TB |
保証 / サポート | 5年 | ||||
参考価格 ※2022年12月12日現在 |
5,980円 | 10,004円 | 9,998円 | 27,500円 | 92,459円 |
「PNY XLR8 CS3030」の容量ラインナップは、250GB、500GB、1TB、2TB、4TBの5モデルです。
公称転送速度は、250GBモデルがシーケンシャル読込3,500MB/s、書込1,050MB/s、500GBモデルがシーケンシャル読込3,500MB/s、書込2,000MB/s、1TBモデルと2TBモデルがシーケンシャル読込3,500MB/s、書込3,000MB/s、4TBモデルがシーケンシャル読込3,500MB/s、書込3,100MB/sです。
全モデル共通で、200万時間のMTTF、5年間の保証が提供されます。
また、ファームウェアのアップデートなど、各種管理が行える「PCIe SSD Toolbox and Firmware Updater」が使用可能です。
PNY XLR8 CS3030 1TBの外観をチェック
裏面には一切チップ等が載っていない、いわゆる片面実装モデルになります。ノートPCや小型ベアボーンに搭載しても、干渉の心配がありません。
表面シールを剥がしてみました。DRAMキャッシュが1つ、メモリコントローラーが1つ、NANDメモリが4つあります。
メモリコントローラーは、PHISON製の「PS5012-E12」です。
NANDメモリの刻印を見ると、「CABBG64A0A」という型番が見えます。調べてみると、YMTC製64層 3D TLCみたいです。このNANDメモリは計4つ搭載されています。
DRAMキャッシュの刻印を見ると、「SCB13H2G160」という型番が見えます。調べてみると、UnilC製DDR3メモリみたいです。
PNY XLR8 CS3030 1TBのパフォーマンス検証
テスト環境
ここからは、実際に「PNY XLR8 CS3030 1TB」をパソコンに組み込んで、パフォーマンスを検証していきます。
Crystal Disk Infoで、対応転送モードでPCI Express 3.0(x4)接続になっていることを確認しました。
テスト環境は以下の通りです。
テスト機のスペック | ||
CPU | core i7-12700 レビュー記事 |
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CPUクーラー | AK400 レビュー記事 |
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CPUグリス | MX-4 4g | |
マザーボード | MSI PRO B660M-A レビュー記事 |
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メモリ | W4U2666CX1-16G ×2 | |
ビデオカード | RTX 3060 Ti レビュー記事 |
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ストレージ | XLR8 CS3030 1TB KINGSTON SSD NV2 2TB Crucial P2 |
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電源ユニット | V750 Semi-Modular RS750-AMAAG1-JP | |
OS | Windows 11 Home | |
PCケース | SMZ-2WBT-ATX レビュー記事 |
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ディスプレイ | EW2780U レビュー記事 |
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ドライバ | 522.25 |
CrystalDiskMark 8.0.4
PNY XLR8 CS3030 1TBのシーケンシャルリードは約3,440 MB/s、シーケンシャルライトは約3,002 MB/sと、公表スペックと同等の性能が出ました。
この数字はExpress 3.0(x4)接続最速といわれているCrucial P3とほぼ同等です。
また、ランダムリードは約2,812 MB/s、ランダムライトは約2,964 MB/sでした。
シーケンシャルリード、シーケンシャルライトを比較すると、PNY XLR8 CS3030 1TBは同じエントリークラスのPCIe 3.0 NVMe SSDの「Crucial P2 1TB」を上回りました。
ランダムリード、ランダムライトを比較すると、「Crucial P2 1TB」だけでなく、PCIe 4.0 NVMe SSDの「kingston SSD NV2 2TB」も上回りました。
TxBENCH
PNY XLR8 CS3030 1TBのシーケンシャルリードは約3,296 MB/s、シーケンシャルライトは約3,006 MB/sでした。
また、ランダムリードは約2,670 MB/s、ランダムライトは約2,862 MB/sでした。
シーケンシャルリード、シーケンシャルライトを比較すると、PNY XLR8 CS3030 1TBは同じエントリークラスのPCIe 3.0 NVMe SSDの「Crucial P2 1TB」を上回りました。
ランダムリード、ランダムライトを比較すると、「Crucial P2 1TB」だけでなく、PCIe 4.0 NVMe SSDの「kingston SSD NV2 2TB」も上回りました。
PassMark PerformanceTest DISK MARK
PNY XLR8 CS3030 1TBのシーケンシャルリードのスコアは3393、シーケンシャルライトのスコアは2991でした。総合スコアは33499でした。
総合スコアを比較すると、「Crucial P2 1TB」だけでなく、PCIe 4.0 NVMe SSDの「kingston SSD NV2 2TB」も上回りました。
Blackmagic Disk Speed Test
PNY XLR8 CS3030 1TBのリードは約2898 MB/s、ライトは約2771 MB/sでした。
リード、ライトを比較すると、「Crucial P2 1TB」だけでなく、PCIe 4.0 NVMe SSDの「kingston SSD NV2 2TB」も上回りました。
AS SSD Benchmark 2.0.7316.34247
PNY XLR8 CS3030 1TBのリードのスコアは2302、ライトのスコアは3332でした。総合スコアは6814でした。
リード、ライト、総合スコアを比較すると、「Crucial P2 1TB」だけでなく、PCIe 4.0 NVMe SSDの「kingston SSD NV2 2TB」も上回りました。
「Compression-Benchmark」の結果を確認すると、PNY XLR8 CS3030 1TBは読み込み、書き込みともに公表スペック内の間で常に変動している印象です。
ただ、読み込み速度は終始安定していましたが、書き込み速度は一瞬落ち込む兆候が見て取れました。
ATTO Disk Benchmark
ATTO Disk Benchmarkは、512 B~64 MB(合計21パターン)のテストサイズ別で読み書き性能を測定するベンチマークソフトです。
ベンチマーク結果が分かりにくいので、下記のようにグラフ化しました。
PNY XLR8 CS3030 1TBの読み込み速度は3200 MB/s前後でピークに達したあと、安定しています。
PNY XLR8 CS3030 1TBの書き込み速度は2800 MB/s前後でピークに達したあと、安定しています。
HD Tune Pro
HD Tune Proは、一定の容量のデータを書き込んだり、読み込んだりして、キャッシュ切れなど、SSDの性能変化を確認するためのベンチマークソフトです。
画像だとわかりにくいので、比較対象含めて、下記のようにグラフ化しました。
PNY XLR8 CS3030 1TBの読み込み速度(平均)は2403 MB/s、書き込み速度(平均)は1990 MB/sでした。
読み込み速度(平均)、書き込み速度(平均)ともに、「Crucial P2 1TB」だけでなく、PCIe 4.0 NVMe SSDの「kingston SSD NV2 2TB」も上回りました。
ファイルベンチマーク(200 GB分)でキャッシュ切れの有無を見ていきます。PNY XLR8 CS3030 1TBの読み込み、書き込み速度は終始安定しており、キャッシュ切れのような兆候は確認できませんでした。

3D MARK STORAGE BENCHMARK
3D MARK STORAGE BENCHMARKは、実際のゲームをプレーする際に発生するデータの読み書き状況を再現して、ストレージの読み書き性能を計測するベンチソフトです。
画像だとわかりにくいので、PNY XLR8 CS3030 1TBのベンチ結果を下記にまとめます。
Bandwidth | Average access time | |
Average | 421.39 MB/s | 77 μs |
Load Battle Field Ⅴ | 534.33 MB/s | 146 μs |
Load Call of Duty:Black Ops 4 | 500.70 MB/s | 152 μs |
Load Overwatch | 281.68 MB/s | 99 μs |
Record game | 216.28 MB/s | 40 μs |
Install game | 253.17 MB/s | 55 μs |
Save game | 336.67 MB/s | 22 μs |
Move game | 1698.40 MB/s | 159 μs |
総合スコア | 2395 |
PNY XLR8 CS3030 1TBのAverageのBandwidthは421.39 MB/s、access timeは77 μs、総合スコアは2395でした。
総合スコアを比較すると、PNY XLR8 CS3030 1TBは同じエントリークラスのPCIe 3.0 NVMe SSDの「Crucial P2 1TB」を上回りました。
Average access timeを比較すると、PNY XLR8 CS3030 1TBは同じエントリークラスのPCIe 3.0 NVMe SSDの「Crucial P2 1TB」を上回りました。
FF14:暁月のフィナーレ(ベンチマークモード)
FF14:暁月のフィナーレ(ベンチマークモード)のローディングタイムを比較すると、PNY XLR8 CS3030 1TBは同じエントリークラスのPCIe 3.0 NVMe SSDの「Crucial P2 1TB」を上回りました。
ファイルコピー時間・転送速度
「DiskBench」を使って、ファイルコピーにかかった時間を計測していきます。ファイルは約70GBと5GBの動画ファイルです。
PNY XLR8 CS3030 1TBの容量5GBのファイルコピー時間は1.673秒、容量70GBは124.097秒でした。
容量5GBのファイルコピー時間を比較すると、「Crucial P2 1TB」だけでなく、PCIe 4.0 NVMe SSDの「kingston SSD NV2 2TB」よりも早かったですが、容量70GBになると、「Crucial P2 1TB」よりも遅いという結果になりました。
PNY XLR8 CS3030 1TBの容量5GBのファイル転送速度は3053 MB/s、容量70GBは581 MB/sでした。
容量5GBのファイル転送速度を比較すると、「Crucial P2 1TB」だけでなく、PCIe 4.0 NVMe SSDの「kingston SSD NV2 2TB」よりも早かったですが、容量70GBになると、「Crucial P2 1TB」よりも遅いという結果になりました。
PNY XLR8 CS3030 1TBの温度をチェック
ヒートシンクを装着した状態と、外した状態でCrystal Disk Mark(64Gib、9回)実行中のSSDの温度をみていきます。温度はモニターソフト「HWiNFO」を参考にします。
ヒートシンクを装着した状態だと、最高温度は59℃まで上昇しました。一方、ヒートシンクなしだと、最高温度は72℃まで上昇しました。
ヒートシンクなしでもサーマルスロットリングは起きなかったので、ヒートシンクなしでも運用は可能です。
ただ、念のためヒートシンクはつけることをおすすめします。
PNY XLR8 CS3030 1TBの良かったところ・悪かったところ
ココがおすすめ
・PCI Express 3.0(x4)、PCI Express 4.0(x4)のエントリーモデルと価格はほぼ同等
・PCIe 3.0 NVMe SSD最速クラスの読み書き性能
・ランダム性能は優秀
・ヒートシンクなしでも運用可能
・片面実装モデルなので干渉の心配がない
・5年保証
ココがダメ
・入手性が極めて悪い
・キャッシュ切れが起きると、性能低下が顕著
・PCI Express 4.0(x4)の最上位モデルと比較すると読み書き性能はかなり劣る
・DRAMキャッシュレス
まとめ
PNY XLR8 CS3030 1TBの価格は、PCIe 3.0 NVMe SSD最速クラスの読み書き性能にも関わらず、PCI Express 3.0(x4)のエントリーモデルとほぼ同等です。
読み書き性能もPNY XLR8 CS3030 1TBのほうがPCI Express 3.0(x4)のエントリーモデルより遥かに優秀なので、コスパという観点で見ると、非常に魅力的なモデルといえます。
ただ、入手性が極めて悪いのと、大量のデータのコピーをすると性能低下が顕著になるのは明確なデメリットといえます。
大量のデータのやり取りをしないという限定条件であれば、PCIe 3.0 NVMe SSD最速クラスの読み書き性能を体感できるので、その点に魅力を感じれば、購入してみてもいいかもしれません。