Ryzen 5 5600Gは、「ZEN3」を採用するAMDのデスクトップ向けAPUです。Ryzen 5000シリーズと同じアーキーテクチャーを採用ということで、内蔵GPUだけでなく、純粋なCPU性能の高さも期待できます。
そこで今回は競合となる、インテル第12世代、Alder LakeのCore i5-12400と比較して、Ryzen 5 5600Gのパフォーマンスを検証していきたいと思います。

今回はあくまでもRyzen 5 5600GのCPU性能に焦点を当てたいと思います。内蔵GPUの性能は下記記事をごらんください↓。
https://mogalabo.com/ryzen-5-5600g-gpu/
- Ryzen 5 5000Gシリーズとは
- Ryzen 5 5600Gを画像でチェック
- Ryzen 5 5600Gの基本動作を確認
- Ryzen 5 5600GのCPU性能をCore i5-12400と比較して検証
- レンダリング性能
- 総合ベンチマーク
- 圧縮と解凍
- 動画エンコード
- ゲーミング性能
- 3D MARK: Fire Strike
- 3D MARK:Time Spy
- FINAL FANTASY XIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
- FINAL FANTASY XV ベンチマーク
- ASSASSINS CREED VALHALLA ベンチマーク
- Cyberpunk 2077 ベンチマーク
- Forza Horizon 5 ベンチマーク
- Tom Clancy’s Rainbow Six Siege ベンチマーク
- Shadow of the Tomb Raider ベンチマーク
- Watch Dogs: Legion ベンチマーク
- Apex Legends
- Fortnite
- VALORANT
- Overwatch 2
- PUBG:BATTLEGROUNDS
- Death Stranding
- Ryzen 5 5600Gの消費電力とCPU温度
- Ryzen 5 5600Gの良かったところ・悪かったところ
- まとめ
Ryzen 5 5000Gシリーズとは
Ryzen 5000GシリーズはRyzen 5000シリーズと同じZEN3アーキテクチャーを採用したデスクトップ向けAPU(内蔵GPUを搭載したCPU)のことです。
Ryzen 5000GシリーズはZEN3アーキテクチャーを採用したことにより、前世代のZEN2アーキテクチャーを採用したRyzen 4000Gシリーズから大幅に進化をしています。
Ryzen 4000GシリーズのCPUコアは、4コアCPUと4MBのL3キャッシュを内蔵した「CCX」を2基組み合わせて構成されていました。
一方、Ryzen 5000GシリーズのCPUコアは、8コアCPUと16MBのL3キャッシュの1チップで構成されています。
すべてのCPUコアから、L3キャッシュやその他のCPUコアへ直接アクセスできることから、Ryzen 4000Gシリーズから大幅にレイテンシが削減されています。
GPUコアにはデスクトップ向けでは最高峰の性能の「Vega」アーキテクチャーのRadeon Graphichsが採用されています。
ただし、他のRyzen 5000シリーズに比べると、L3キャッシュの量が削減されたり、PCI-Express4.0の採用が見送られたりと、明確なデメリットは存在します。
Ryzen 5000Gシリーズのラインナップは、主に「Ryzen 7 5700G」、「Ryzen 5 5600G」の2種類です。仕様は下記の通りです。
Ryzen 7 5700G | Ryzen 5 5600G | |
コアアーキテクチャ | ZEN3 | |
製造プロセス | 7nm | |
プラットフォーム | Socket AM4 | |
物理コア | 8 | 6 |
論理コア | 16 | 12 |
L2キャッシュ | 4MB | 3MB |
L3キャッシュ | 16MB | 16MB |
ベースクロック | 3.80GHz | 3.90GHz |
最大クロック | 4.60GHz | 4.40GHz |
グラフィックスコア | 8 | 7 |
GPUクロック | 2,000MHz | 1,900MHz |
TDP | 65W | |
参考価格 ※2023年1月20日現在 | 約27,000円 | 約19,000円 |
主な違いは物理コアと倫理コアの違いです。Ryzen 7 5700Gは8コア16スレッドに対して、Ryzen 5 5600Gは6コア12スレッドです。
両CPUともにSocket AM4なので、AMD500シリーズだけでなく、AMD400シリーズなどの古いマザーボードも使用可能です。ただし、古いマザーボードをそのまま流用する場合、BIOS更新が必要です。
また、両CPUともにリテールクーラーの「Wraith Stealth」が付属します。
<TSUKUMO
Ryzen 5 5600Gを画像でチェック
Ryzen 5 5600Gの内容物一覧です。CPU本体、リテールクーラー、マニュアルが同梱されています。
Ryzen 5 5600Gの表面です。「AMD Ryzen 5 5600G」という刻印があります。
Ryzen 5 5600Gの裏面です。信号ピンがびっしりと敷き詰められています。
リテールクーラーの「Wraith Stealth」です。表面には「AMD」という刻印があります。
「Wraith Stealth」の裏面です。初めからグリスが塗られています。
Ryzen 5 5600Gの基本動作を確認
Ryzen 5600Gのスペックを簡単にまとめると、下記の通りです。
・VegaアーキテクチャーのRadeon Graphicsを採用
・6コア12スレッド
・ベースクロック3.90GHz
・最大ブーストクロック4.40GHz
・TDP65W
・L3キャッシュは16MB
ここでは実際にパソコン上からスペックを確認していきます。
タスクマネージャーから、6コア12スレッドであることを確認できました。
CPU-Zから、L3キャッシュの量が16MBであることを確認できました。
HWinfoからシングルスレッド動作時は最高4.40Ghzまでクロックが上昇することを確認できました。
マルチスレッド動作時も全コア最高4.40Ghzまでクロックが上昇することを確認できました。
Ryzen Masterから、PPT88W、TDC50A、EDC75Aでの動作が確認できました。公称仕様値はTDP65Wですが、冷却に余裕がある場合、PPT88Wまで動作するようです。ちなみにデフォルト設定です。
Ryzen 5 5600GのCPU性能をCore i5-12400と比較して検証
ここでRyzen 5 5600Gを実際に組み込んだPCを使用して各種ベンチマークを行って、性能を検証していきます。
AMDテスト機材 | インテルテスト機材 | |
CPU | Ryzen 5 5600G (amazon / TSUKUMO | Core i5-12400 (amazon / TSUKUMO |
CPUクーラー | DeepCool AK400 (amazon / TSUKUMO | |
CPUグリス | ARCTIC MX-4 (amazon / TSUKUMO | |
マザーボード | Gigabyte B450 SH2 | MSI PRO B660M-A (amazon / TSUKUMO |
メモリ | Crucial CT2K16G4DFRA32A(16GB×2/3200MHz動作) (amazon / TSUKUMO | |
ビデオカード | RTX3060 Ti (amazon / TSUKUMO | |
SSD | Crucial P2 1TB (amazon / TSUKUMO | |
電源ユニット | 750W GOLD電源 使用モデル:V750 Semi-Modular RS750-AMAAG1-JP) | |
PCケース | SMZ-2WBT-ATX (amazon / TSUKUMO | |
OS | Windows 11 Home 64bit (amazon / TSUKUMO | |
ビデオカードドライバ | NVIDIA 517.48 DCH |
検証用のマザーボードはAMD B450チップセットを採用するGigabyteの「B450 SH2」、メモリには3,200MHz駆動のCrucialの「CT2K16G4DFRA32A」(16GB×2)、ビデオカードにはRTX3060 Tiを使用しました。
なお今回は比較対象として、インテル第12世代、Alder LakeのCore i5-12400でも計測を行っています。
Core i5-12400のレビューはこちら↓。

レンダリング性能
Cinebench
Cinebench R15
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、マルチでは7cb勝っていますが、シングルでは11cd負けています。
Cinebench R20
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、マルチでは499pts、シングルでは69pts負けています。
Cinebench R23
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、マルチでは1296pts、シングルでは234pts負けています。
CPU-Zベンチマーク
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、マルチでは150pts、シングルでは110pts負けています。
PassMark PerformanceTest:CPU MARK
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、574pts負けています。
3D MARK:CPU PROFILE
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、8thread、4thread、2threadで勝っていますが、MAXthread、16thread、1threadで負けています。
Geekbench
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、マルチでは639pts、シングルでは245pts負けています。
Blender Benchmark
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、monsterでは11、junkshopでは5、classroomでは6負けています。
V-Ray Benchmark
CPU性能を計測する「V-RAY」と、GPU性能を計測する「V-RAY GPU」、GPUのレイトレ性能を計測する「V-RAY GPU RTX」の3種類が用意されているが今回は「V-RAY」のみを使用します。
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、1156pts負けています。


レンダリング性能は全体的にCore i5-12400がRyzen 5 5600Gを上回るという傾向が見て取れました。特にシングル性能は大きく差がついている印象です。インテル第12世代でシングル性能が飛躍的に上昇したので、それが結果として表れている印象です。
総合ベンチマーク
PC MARK 10 Extended
今回はCPU性能だけを純粋に計測したいので、GPUを使う「Use
そのため、設定がカスタマイズ可能なPC MARK 10 Extendedを使用します。なお、カスタマイズすると総合スコアが得られなくなるので、それぞれのテストのスコアを比較します。
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、Gamingでは186pts勝っていますが、Essentialsでは782pts、Productivityでは917pts、Digital Content Creationでは352負けています。
なお、PCMark 10 Essentials スコアで4100以上、PCMark 10 Productivityのスコアで4500以上、PCMark 10 Digital Content Creationのスコアで3450以上がPC MARK 10が定める推奨のシステムです。
両CPUともに推奨環境を満たしています。


「Essentials」はPCの基本性能を計測、「Productivity」はビジネスアプリケーションの処理性能を計測、「Gaming」はゲームの実行に関わる性能を計測、「Digital Content Creation」はコンテンツ制作に関わる性能を計測します。
圧縮と解凍
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、圧縮では2GIPS、解凍では19GIPS勝っています。
動画エンコード
X264 FHD Benchmark
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、1FPS勝っています。
HWBOT x265 Benchmark
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、1080Pでは5FPSでは勝っていますが、4Kでは全くの互角でした。
HandBrake
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、x264では6FPS、x265では4FPS負けています。
AviUtl
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、x264では9秒、x265では26秒負けています。
ゲーミング性能


ゲームベンチでは基本的に最低設定、スケーリングは100%、アップスケーリングはオフにしています。
3D MARK: Fire Strike
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、Combinedスコアでは1519pts勝っていますが、総合スコアでは35pts、Graphicsスコアでは1089pts、Physicsスコアでは968pts負けています。
3D MARK:Time Spy
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、総合スコアでは301pts、Graphicsスコアでは1pts、Physicsスコアでは1291pts負けています。
FINAL FANTASY XIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
ここからは実際のゲームを想定したベンチマークを行っていきます。まず、最初に実施するのは、FINAL FANTASY XIV: 暁月のフィナーレのベンチマークです。
解像度は1,920×1,080ドット、グラフィックス設定は標準品質(デスクトップ)を選択しています。
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、総合スコアでは4824pts負けています。
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、平均フレームレートでは30fps、最低フレームレートでは14fps負けています。
FINAL FANTASY XV ベンチマーク
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、総合スコアでは1665fps負けています。
ASSASSINS CREED VALHALLA ベンチマーク
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、平均フレームレートでは20fps、1%LOWでは20fps負けています。
Cyberpunk 2077 ベンチマーク
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、平均フレームレートでは11fps、最低フレームレートでは12fps負けています。
Forza Horizon 5 ベンチマーク
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、平均フレームレートでは25fps負けています。
Tom Clancy’s Rainbow Six Siege ベンチマーク
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、平均フレームレートでは37fps、最低フレームレートでは35fps負けています。
Shadow of the Tomb Raider ベンチマーク
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、平均フレームレートでは21fps、最低フレームレートでは7fps負けています。
Watch Dogs: Legion ベンチマーク
Watch Dogs: Legion ベンチマークです。解像度は1,920×1,080ドット、グラフィックス設定は低設定を選択しています。
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、平均フレームレートでは14fps、1%LOWでは10fps負けています。
Apex Legends
ベンチマークモードがないので、演習場を3分間周回している間のフレームレートを計測します。
グラフィック設定にプリセットがないので、可能な限り各設定を最高レベルに引き上げています。解像度は1,920×1,080ドットです。
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、平均フレームレートでは11fps、1%LOWでは12fps負けています。


Apex Legendsは300fpsが上限なので、もし各設定を最低レベルに引き下げると、300fpsに張り付いてしまい、差がつかなくなってしまいます。
Fortnite
ベンチマークモードがないので、クリエイティブ島を3分間周回している間のフレームレートを計測します。
解像度は1,920×1,080ドット、グラフィックス設定は低設定を選択し、3D解像度は100%、描画距離は最大に設定しています。
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、平均フレームレートでは92fps、1%LOWでは40fps負けています。
VALORANT
ベンチマークモードがないので、演習場を3分間周回している間のフレームレートを計測します。
グラフィック設定にプリセットがないので、可能な限り各設定を最低レベルに引き下げています。解像度は1,920×1,080ドットです。
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、平均フレームレートでは74fps、1%LOWでは63fps負けています。
Overwatch 2
ベンチマークモードがないので、演習場を3分間周回している間のフレームレートを計測します。
解像度は1,920×1,080ドット、グラフィックス設定は低設定を選択しています。
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、平均フレームレートでは34fps、1%LOWでは13fps負けています。
PUBG:BATTLEGROUNDS
ベンチマークモードがないので、演習場を3分間周回している間のフレームレートを計測します。
解像度は1,920×1,080ドット、グラフィックス設定は最低設定を選択しています。
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、平均フレームレートでは88fps、1%LOWでは44fps負けています。
Death Stranding
Death Strandingです。
ベンチマークモードがないので、フィールドを3分間歩いている間のフレームレートを計測します。
解像度は1,920×1,080ドット、グラフィックス設定は低設定を選択しています。
Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に対して、平均フレームレートでは34fps、1%LOWでは25fps負けています。


RTX3060Tiと組み合わせると、Ryzen 5 5600GはCore i5-12400に比べて、フレームレートが伸びない結果になりました。Core i5-12400に比べると、Ryzen 5 5600GはL3キャッシュの量が少ないのと、シングル性能が低いので、そのあたりの要素がゲーミング性能に影響を与えたと思います。
Ryzen 5 5600Gの消費電力とCPU温度
消費電力
ベンチマークが一通り終わったので、消費電力を確認していきます。ビデオカードを外した状態で、ワットチェッカーを使って、システム全体の消費電力を見ていきます。
アイドル時は20~21Wを前後を推移、高負荷時(CINEBENCH R23:10 minutes実行時)は最高で106Wを記録しました。
CPU温度
高負荷時(CINEBENCH R23:10 minutes実行時)のCPU温度の推移を見ていきます。また、リテールクーラーの「Wraith Stealth」を装着した状態でも計測を行いました。
Deep Coolの「AK400」装着時では、最高温度は61℃で頭打ちとなりました。
一方、リテールクーラーの「Wraith Stealth」では最高温度は78度まで温度が高くなりましたが、最高許容温度まで、まだまだ余裕はあります。リテールクーラーでも運用は十分可能です。


エアフローの悪い窒息気味のPCケースの場合、リテールクーラーだと冷却が間に合わない可能性があります。
Ryzen 5 5600Gの良かったところ・悪かったところ
・6コア12スレッド、内蔵GPU付きのCPUが2万円以下という圧倒的コスパの良さ
・内蔵GPUの性能が高い
・消費電力が低い
・高負荷時のCPU温度が低いのでリテールクーラーでも問題なし
・AM4なので、B450などの古いマザーボードが使用可能
・安いDDR4メモリが使える
・L3キャッシュの量が少ない
・ビデオカードと組み合わせた時のゲーミング性能がイマイチ
・PCI-Express4.0には未対応
まとめ
Ryzen 5 5600GのCPU性能は思ったより悪くない印象です。レンダリングのベンチマークでも、Core i5-12400に肉薄しているテストもあったくらいです。
ただ、ビデオカードと組み合わせたとき、L3キャッシュ量の少なさ、シングル性能の弱さが足を引っ張っているのか、Core i5-12400に比べるとあまりゲーミング性能は伸びませんでした。
ただ、今回テストしたのがRTX 3060Tiだったので、例えば、RTX3050といった下位モデルであれば、そこまで大きな差は生まれないと個人的に思います。
いずれにしても、Ryzen 5 5600Gは、そこそこ強いCPU性能、強力な内蔵GPUを兼ね備えながら、2万円前後(※2023年1月現在)で購入できる時点で、間違いなくコスパに優れたCPUといえます。
さらに実質、Ryzen 5 5600Gから内蔵GPUをなくしたバージョンといえる、Ryzen 5 5500は1万円前半という破格の安さです。内蔵GPUがいらなければこちらもおすすめです。
価格破壊が起きているZEN3のCPUは、まさに今が買い時なのかもしれません。
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